SYONテクニカル

Gentooの薦め

サイオンコミュニケーションズ株式会社
沈 大維(David Shen)

今回は技術的な話というよりも、Linuxを14年使ってきた中で今私が最も気に入っているディストリビューション、Gentooについて話したいと思います。使えるテクニカルメモというより、お茶でも飲みながら軽く読み流してください。

Gentooへの道のり

私は大学でコンピュータ工学を専攻した際に、学校での授業はほぼすべてがUNIX関連で、開発、ネットワーク知識、OS知識をUNIX系のシステムで勉強しました。家ではDOSを使っており、はじめは「UNIXなんて意味わかんない」と思っていましたが、X Windowや当時まだNSFネットと呼ばれるインターネットの前身に触れるようになり、UNIXのすばらしさに目覚めていきました。

大学卒業後は家でもUNIXをと思い、1991年当時UNIX系雑誌を探し回って、Linux 0.99などというものを見つけ、5.25″フロッピー30枚で
386マシンにインストールできるSLSというディストリビューションを通販で購入しました。その後は Slackware → Caldera → RedHat → Vine → Kondara →Trustix → Debian (Linuxはディストリビューション多すぎ!!)ときましたが、今はGentooに落ち着いています。周りの技術者には安定性、システムの管理性の高さからFreeBSDを推奨する人もいましたが、ずっとLinuxを使っていた自分としてはここでLinuxから離れる気にはなれず、いつかきっとLinuxでもFreeBSDに負けないくらいよい物が出てくると信じて使ってきました。

なぜGentoo?

今まで使ってきたLinuxディストリビューションは一長一短で、ワークステーションとして使うには良いがサーバとして使うにはちょっと、またサーバとして
使うには良いがワークステーションとしては厳しいというものばかりでした。

特にセキュリティに関してはソースからアプリケーションをコンパイルできるFreeBSDに比べ、インストールパッケージが出るまでに何日もかかったり、出たと思ったらまたすぐセキュリティホールが見つかったために数日待ってアップグレードという状況でした。また、同じバージョンのRedHatで同じアプリケーションでも数々のRPMパッケージが存在し、どれをインストールしていいのやら悩んだり、やっと見つけたと思っても依存関係が分からずかなりの数の別アプリケーションをインストールした後に、やっと目的のものをインストールし、そうした後もライブラリ周りをアップグレードしたために別なものが動かなくなったりと、便利というよりも頭の痛い思いをすることの方が多かったのです。

セキュリティに重きを置くと、TrustixやDebianがLinuxディストリビューションでは良いと言われているため、どちらも試してみましたが、バージョンのかなり古いアプリケーションしか使えず、バージョンを上げようにもライブラリ全てのアップグレードとなると、結局はそのディストリビューションの原型をとどめない程いろいろ変えていかなければならないのかと思うなど、私には面倒な物でした。

そんな中portageというパッケージ管理ツールを使い、バイナリでもソースからでもインストール可能なディストリビューションがあることを聞きつけ、早速ダウンロード、インストールを行うことにしました。

Gentooの挫折

悪い癖とは知りつつ、昔から新しい機械を使うとき仕様書やマニュアルを読む前にまずはいろいろと試し、分からなくなったら適当に読んでどうにかすることを覚えてしまった私は、他のディストリビューション同様CD-ROMからブートすればメニューが上がり、後は表示メッセージに従ってインストールするものと思っていました。しかしGentooを立ち上げた瞬間、プロンプトだけが表示されて、それ以外にはメニューも何も表示されません。

最近はRedHat系ばかりを使っていたため、これ以降インストール作業を続けるのが面倒くさいと思いましたが、「そうか。ちゃんとしたインストーラがまだできてないのか。しょうがない、インストールマニュアルでも見るか。」くらいに思っていました…しかし、いきなり驚かされる説明がそこにはありました。そこには

「ブート後、fdiskまたはcfdiskでパーティションを作成し…」

 

とあり「うん??なに?直接HDにパーティション作成?それからtarで解凍?」…これってちゃんとしたインストーラがないのではなく、インストーラがないディストリビューションだったんです。Debianのインストールでさえ敷居が高いと思っていましたが、まさかインストーラ自体ないとは…しかしここであきらめては自分好みのディストリビューションをまた探さなければならず、まずは使ってみようと思い、なんとか説明書を読みながらインストールを完了しました。

Use fdisk or cfdisk to create your partition layout. You need...

図1. Gentooのインストール説明書(英語版 2005年8月現在)
『パーティションを作成するために
fdiskまたはcfdiskコマンドを使用してください』
と説明されている。

今まで普通に使っていたvicronまで選択してダウンロード後にインストールまたはCDからインストールするのはさすがにめんどくさいの極みです。しかし裏を返せばいらないものはインストールする必要がなく、自分好みのシステムが作れるというところに感動しました。

また余談ですが、テストインストール用に使っていたマシンがPentiumの300Mhzにもかかわらず、何を思ったかパッケージからのインストールではなく、ソースからのインストールを選択してしまい、さらにはX11のインストールも始めてしまいました。

結局「初めてのGentooインストール」は1週間以上コンパイルにかかり、設定も含め2週間かかってしまいました。…うんん、これじゃ普及しないような…その後めげずにいろいろなインストール方法を試すために3回ほどインストールし直しました。それでも最短のバイナリインストールで3時間ほどかかってしまいました。

インストール完了後

インストールを一通り終わらせ、portageを使い、システムのメンテナンス性や拡張性、アップグレード性を検証しましたが、一言で言うと「すばらしい!!」。バイナリからでも、最新のソースからでも好きにインストール管理ができる。しかも依存関係まで処理してくれる。FreeBSDユーザからすれば「そんなの常識でしょう」と思われるでしょうが、それがLinuxでできるというのはLinuxユーザには喜ばしいことなのです。必要ないものはインストールされることが無く、必要な物だけをインストールし、常に最新のアプリを使うことができる。セキュリティホールが出てもパッケージが出るまで待つことはなく、すぐにソースからのインストールが可能となる。サーバとして使うにも、ワークステーションとして使うにもこの機能は必需品といえるでしょう。

今後のGentoo

2004年4月にGentoo設計者のダニエル・ロビンズはGentoo設計者を降り、現在はなんとマイクロソフトで働いています。その後のGentooは他の技術者に引き継がれ現在でも成長し、またユーザも増えています。実際Linuxユーザグループの中でも「Gentoo使ってます」って言うと、「マニアックですね」と言われることがアメリカでも多いと聞いていますが、敷居は高いとはいえLinuxの基本を理解し、長く使用するという観点では、いままで使ってきたどのLinuxディストリビューションよりも使い勝手はいいと思います。

是非興味のある方はGentooのインストールを試してみてください。その際の私からのアドバイスですが、

ソースからのコンパイルインストールにはご注意下さい。

ということです。遅いマシンでインストールすると、非常に長い時間がかかり、何をどこまでやったのか忘れてしまい、Gentoo挫折の道をひた走ることになります。

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